中小企業診断士試験
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中小企業診断士試験の難易度は下がる?今後の予想について

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こんにちは。ぶらんちです。少し古いですが、2020/11/11(水)東洋経済オンラインに興味深い記事が投稿されました。

上記の記事を要約すると「今後10年で合格率が2倍になり、質が低下する」とずいぶん過激な内容となっています。

当時(令和2年)は1次試験合格率が42.5%と過去最高を記録したこと、まだ1次試験合格者の新名称付与制度がなかったことなど、多少齟齬が出ている部分があるとは思います。が、本当に「合格率が2倍になって質が低下する」なんてことがあり得るのか、考察していきたいと思います。

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1次試験の合格率推移

直近5年間の合格率についておさらいしてみましょう。まずは1次試験全体の合格率です。

1次試験の合格率

実施年度1次受験者数1次合格者数1次合格率前年度比較
H3013,773人3,236人23.5%+1.8%
R114,691人4,444人30.2%+6.7%
R211,785人5,005人42.5%+12.3%
R316,057人5,839人36.4%△6.1%
R417,345人5,019人28.9%△7.5%
※1次受験者は7科目全てを受験した者の人数

令和に入ってから合格率が急上昇しています。
特に令和2年度については、7科目全て受験した受験生は減少しているにも関わらず合格率は上昇していますね。この要因を探るために、科目合格の合格率も見てみましょう。

実施年度H30R1R2R3R4
企業経営理論7.1%10.8%19.4%34.7%17.3%
財務・会計7.3%16.3%10.8%22.4%13.3%
運営管理25.8%22.8%9.4%18.5%16.1%
経済学・経済政策26.4%25.8%23.5%21.1%10.5%
経営情報システム22.9%26.6%28.7%10.6%18.5%
経営法務5.1%10.1%12.0%12.8%26.9%
中小企業経営・政策23.0%5.6%16.4%7.1%10.9%
※1次受験者は7科目全てを受験した者の人数

合格率が20%以上の科目黄色マーカー10%未満水色マーカーです。平成30年度までは、合格率が10%未満の科目が複数あり、どれかに引っかかれば合格に届かない状態でした。合格率が3%や5%といった科目もあり、俗に爆弾科目と呼ばれ恐れられました。

爆弾科目があると、「科目合格を少しずつ重ねて1次合格する」という計画を立てづらくなります。

1次試験は7科目合計で420点取れば合格となりますが、前年までの科目合格は60点として換算されます。例えば前年までに6科目合格した場合は6×60=360点の持ち点となり、残り1科目は確実に60点以上取らないと1次合格できません。

この残り1科目が爆弾科目となる可能性があるわけで、「苦手科目が残っちゃったけど60点取る自信がない…。得点源の科目も受け直す?」「でも得点源の科目が爆弾科目だったら…?」など、受験生をメチャクチャ悩ませることになります。

ところが令和に入ると爆弾科目少なくなり、難易度が平準化してきています。平準化によりストレート合格はもとより、科目合格が全て揃った受験生が増え、1次合格者が増えたと考えられます。ただし、科目合格率が上がっているわけではないので注意が必要です。

1次試験の傾向

各年度の科目難易度は平準化傾向。但し簡単になっているわけではない。
複数年度で考えれば合格のチャンスは広がっている。

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2次試験の合格率推移

実施年度2次受験者数2次合格者数2次合格率前年度比較
H294,279人828人19.4%+0.2%
H304,812人905人18.8%△0.6%
R15,954人1,088人18.3%△0.5%
R26,388人1,174人18.4%+0.1%
R38,757人1,600人18.3%△0.1%
R48,712人1,625人18.7%+0.4%
※2次受験者は筆記試験4科目全てを受験した者の人数
※2次合格者数は口述試験の合格した者の人数

2次試験も合格者数は年々増えています。直近5年間においては、事例Ⅰ~Ⅲの難易度に大きな変化はありません。事例Ⅳは難化・易化があるものの、合格率には大きく影響していません。

ただし合格率はほぼ横ばいで、合格者数の増加は1次試験の合格率上昇による受験者数増加が要因です。すなわち2次試験は絶対数ではなく、合格率が18%程度になるよう調整されていると捉えて良さそうです。

2次試験の傾向

各年度の難易度に大きな変化なし。
受験人数に関わらず、上位18%に入れば合格できると考えられる。

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全体の合格率推移

最後に全体の合格率について計算してみます。

実施年度1次合格率
(A)
2次合格率
(B)
ストレート合格率
(A×B)
H2817.7%19.2%3.40%
H2921.7%19.4%4.21%
H3023.5%18.8%4.42%
R130.2%18.3%5.53%
R242.5%18.4%7.82%
R336.4%18.3%6.7%
R428.9%18.75.4%

平成28年度から考えると、既に合格率はほぼ2倍になっています。特に令和2年度は顕著です。合格しやすくなったとは到底実感できませんが、1次試験の難易度平準化により2次試験に挑戦できるチャンスが増えた、とはいえると思います。

合格率の推移

全体の合格率は上昇している。
2次試験挑戦の裾野が広がって、合格のチャンスは増えている!

今後の傾向予想

1次試験は取り組みやすくなる

これまで爆弾科目があった年度は、「こんなの専門資格を持っていても知らないよ…」というような超高難度の出題がある一方、他科目では基礎的な出題が増える等、「7科目全体でバランスを取っている」という傾向がありました(ゆえに科目合格で1次試験合格を目指すことが難しかった)。

ただ、今後は難易度の平準化傾向が定着するものと考えられます。

理由は、1次試験の科目合格者に対しても新名称が付与されるようになったことが挙げられます。科目合格者に名称を与える以上、難易度が乱高下するようではスキル認定にならないからです。

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1次試験合格者に新名称が付与されます!
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「難易度が安定する→爆弾科目がなくなる」ということで、頻出論点がより重要となります。故に1次試験については学習範囲が絞られかなり取り組みやすくなると思います。

2次試験は厳しい戦いが続く

一方、2次試験については今後も合格率18~20%前後で推移すると予想されます。合格率が変わらないので変化がないと思われがちですが、絶対数でみれば令和3年度は7,000人以上が不合格になっており、難関であることは変わりません。

1次試験の難易度平準化により2次試験の受験生は今後も増加すると見込まれます。たくさんのライバルの中で上位20%に入るのには、これまで以上の取り組みが必要となるかもしれません。

診断士の質が低下する?

上記の傾向を見るに、診断士の質の低下に結び付く要素は見当たらないですよね。

爆弾科目なんて診断士に求められているレベルではないと思うし、1次試験の平準化は正しい方向の変化と考えます。一方、2次試験については難易度に変化は無いので、今後増加する中小企業診断士の質の低下は考えづらいです。

ちなみに「食えない診断士が増える?」についても、他記事で触れているので合わせて読んでみてください。

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まとめ

如何でしたでしょうか。

2次試験への挑戦権が得やすくなり、合格のチャンスは広がっています。ただ、決して簡単になっているわけではないことは留意してくださいね。

それにしても「食えない」系の記事は煽り記事なんですかね。そうなんでしょうね。。。
こういう記事が出ないくらい、もっと中小企業診断士の地位が向上するといいなぁ…。

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ぶらんち
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中小企業診断士
システムエンジニアとして14年間キャリアを積んだ後にコンサルティングファームに転職。ITコンサルタントとして従事する傍ら、中小企業診断士として伴走支援を実施中。
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