診断士試験の本当のゴールは実務補習かもしれない
こんにちは。ぶらんちです。さて今回は私自身が受けた時の実務補習の様子と、そこから見える「中小企業診断士試験の位置付け」みたいな話を書きたいと思います。
実務補習とは
中小企業診断士になるためには、合格後3年以内に実務補習か実務従事のどちらか15日間を実施し、証明書を添付し登録申請を行います(1日1ポイント換算で計15ポイントが必要)。
そのうちの実務補習とは、登録実務補習機関により実施されるグループワークのようなもので、5日間の日程で実際に1企業の経営診断を行い、90ページ程度の診断報告書を作成します。
本物の財務諸表も頂きますし、経営者へのヒアリングも行います。最終日には診断結果を経営者に報告し終了となりますので、診断報告書は研修のただの成果物ではなく提案書に近いです。
その為、「経営者が課題を理解し、実際に取り組める解決策」をどうまとめていくかが肝になります。
- 開始1週間前
事前情報がメールで届きます - 初日(金)
顔合わせの後、会社に訪問し社長へのヒアリングを行います - 2日目(土)
みんなで話し合い診断報告書の方向性を決めます - 平日(月~金)
自分のパートの診断報告書を書きます - 3日目(土)
内容の摺り合わせを行います - 4日目(日)
最終調整の上、製本します - 5日目(月)
診断協会に報告書を提出、午後は社長への報告会で終了です!
役割分担
90ページの診断報告書を1人で書けるはずもなく、チームで分担して作業を行います。人数や診断先によって多少相違はあると思いますが、役割分担はだいたい以下の通りです。
- 全体戦略(リーダー)
- 財務管理
- 営業戦略
- IT戦略
- 生産管理
- 労務管理
全体戦略(リーダー)
全体戦略(リーダー)は文字通り全体の方向性を決める重要な役割です。SWOT分析から強み・弱み・機会・脅威を抽出し、「強みを活かし、弱みを克服する」ための経営戦略を策定します。各パートの改善提案に矛盾がないか、実現可能性はあるか等、全体のとりまとめも行います。
財務管理
財務管理は、財務諸表から収益性・効率性・安全性を分析し、改善案や売上目標設定などの提案を行います。会社は資金繰りが上手くいかないと黒字でも倒産してしまうので、やはりお金回りの分析も重要です。
営業戦略
営業戦略は、売上目標を達成するためのマーケティングについて提案を行います。既存顧客との関係性強化や新規顧客開拓、ブランド価値の創出など、何を優先して取り進めるべきかも含めて提案します。
IT戦略
IT戦略は、業務効率化や生産性向上、新規事業展開などを目的としたIT投資の提案を行います。診断先の状況によってはセキュリティ強化なんかの提案をすることもあるかもしれません。
生産管理
生産管理は、主に製造業における生産計画・生産統制などの改善提案を行います。日本はモノづくりの国だからか診断先が製造業のことが多いそうなので、事例Ⅲの知識が大活躍です。
労務管理
労務管理は、人事・組織の観点での改善提案を行います。従業員のモラール向上や採用・配置転換・能力開発・評価・報酬の他、労働基準法の遵守など、検討すべきことはたくさんあります。
チームでより良い提案を目指す
先日実務補習でお伺いした企業は、以下のようなお悩みをお持ちでした。
- 市場全体が縮小傾向だったところにコロナ禍が直撃している(2期赤字)
- 生産現場は完全分業制で手待ちが多い
- 新規事業を始めたいが、社長だけで営業活動をしていて忙しい
- 従業員のモチベーションが低下している
初日のヒアリング終了後、2日目の朝までにリーダーが全体戦略を策定します。具体的にはSWOT分析をして「強み・弱み・機会・脅威」を洗い出し、課題の設定と改善の方向性をまとめます。ちなみにぶらんちはリーダーをやりました。
分析の結果、業績回復が急務の状態でした。新規事業のアイディアはありましたが、ターゲットが不明確で市場規模が未知数という状態。事業化するには時間がかかりそうです。どちらかと言えば、既存顧客との関係性強化の方が早く売上に繋がりそうでした。
そこで短期的課題として「業績の黒字回復」、中長期的課題として「新規事業の立ち上げ」という全体戦略を考えました。そして、まずは経営理念を明文化し今後の方向性を従業員に浸透させましょう、というストーリーです。
全体戦略をベースに、チームで話し合って各パートを具体化していきます。
いくら売り上げれば黒字化できそうかな?
(財務担当)
月間売上XXX万円くらいアップしないと厳しそうです。
(営業担当)
それならたくさん営業活動しないと!人を増やそう!
(全体戦略担当)
いや、それだとコストアップになっちゃうよ?
手待ちで空いている従業員がいるんじゃないかな?
こんな感じで、診断報告書全体を一貫性・妥当性のあるものに仕上げていきます(ここが大変だけどめっちゃ楽しい)。
試験勉強してきたことが役に立った
実務補習は約1週間を駆け抜けていくイメージなので、とにかくスピードが大事です。その為にはある程度の知識・フレームワークを身についておく必要があり、もし試験もなく実務補習から始まっていたら、到底良いものは出来なかったと思います。
中小企業診断士試験というのは、「実際の現場に出るための最低限の知識・フレームワークを身に着けているか」を見るための試験であることを改めて実感しました。
そういう意味では、中小企業診断士試験の本当のゴールは「実務補習(実務従事)」で、そこに向けた学習計画を立てるのが本筋なのかもしれません(難しい…)。
理論だけでは上手くいかない
ちなみに、メンバーで議論した際に「表彰制度を作ってはどうか」という案が出ました。お金もかからないしモチベーション向上に繋がるし、とっても良いように思いますよね。
ところが施策指導員の先生に相談したところ、「それは提案しないほうがよい」という答えが返ってきました。
「教科書的にはOKだが、今回はNG。10人もいないような小さな会社だと、表彰の有無でなんとなく優劣を付けられている感じが出て、時には人間関係が悪くなったり、余計にモチベーションが下がる人が出てくる。」とのことでした。「確かにあり得るな」と納得したのを覚えています。
事例Ⅰに限らず、2次試験を解く際に「テキストにこう載ってたから」「フレームワークではこうなっているから」といった理由で回答を作る方を見かけます。対応として間違いではないのですが、一番大事なことは「事例企業の改善につながるか」であり、やはり与件文から得られる情報を大切にしてほしいと思います。
テキストに載っている知識やフレームワークは、あくまで思考プロセスのベースになるものであって、回答の根拠そのものではないということを念頭に解いてみると、新たな気づきがあるかもしれません。
まとめ
如何でしたでしょうか?
少し先の話かもしれませんが、めでたく合格し実務補習に参加することとなったら、絶対に一度は全体戦略(リーダー)にやってみてください。経営戦略を立てる機会なんてそうそう無いですし、得るものが大きいですよ!