実務で役立つ!フェルミ推定
こんにちは。ぶらんちです。みなさんはフェルミ推定というのはご存知ですか?中小企業診断士のみならず、コンサルタント業務を行うにあたって良く使われる手法です。
ちなみに中小企業診断士試験には出題されません(たぶん)。なので息抜きに読んで頂ければ幸いです。
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、実際に調査することが難しい大きな量を、論理的に推測し短い時間で概数を算出する手法のことです。調べようがなかったり調べるにも多額のコストが発生するような「やっかいな問題」に対しても、仮説を立てることで説得力のある数字をはじき出すことができます。
日本に小学校は何校あるか?
「小学校の数なんて考えたことない」という方は、おそらく見当もつかないとと思います(ぶらんち含む)。まずはフェルミ推定をするための基本的な情報を整理します。
- 日本の人口は1.2億人
- 全国の世帯数は5000万世帯
- 平均世帯人数は2.5人
- 1年に生まれる子供の数は100万人
- 日本の国土面積は38万㎢
- 平地と山岳地の割合は3:7
いろんなアプローチがあると思いますが、例えば子供の数の観点で考えてみましょう。
仮に1学年30名のクラスが3組とすると、1校に通う小学生の人数は90人です。1年に生まれる子供の数は100万人とのことなので、だいたい11,000校あれば充足します。但し離島などでは1学年に数人ということがあったり、地域が広いので定員を減らして多く設置することもあったりします。私立などもありますよね。それらを考慮して安全係数として1.5倍してみると、だいたい17,000校くらいと考えることが出来ます。
では実際のところどうでしょうか?政府統計データ「学校基本調査」によると、令和2年(2020年)時点で小学校の数は19,525校だそうです。当たらずとも遠からず、という感じですね。
実務ではどう使う?
多分よく使うのは新規事業の市場予測だと思います。大きな市場の場合、国や業界団体が公表している統計データから推定することができます。民間調査の場合は有料だったりするのですが、たいていのデータは大きな図書館で閲覧することが出来ます。
しかしニッチな事業の場合は必要な情報が足りないことが多く、フェルミ推定が大いに役に立ちます。実例にすると色々と支障があるので、ここはフィクションで解説します。
2倍のスピードで歩くことのできる夢の「ダッシュシューズ」を発明!1足50万円で販売したいが、市場規模はどのくらいか?
尚、ダッシュシューズはおよそ100km歩くと履きつぶれる。スニーカータイプであり、走った場合は2倍の効果は発揮されない。
2倍のスピードで歩くことによる体調への影響はさておき、まずはどんな人にニーズがありそうでしょうか?
- 新しいものが好きなお金持ち
- シューズコレクター
- 競歩の世界レベル選手
非常に高額なので、大衆向けではないのは確かです。上記の中で一番有力なのは競歩の世界レベル選手だと思います。男子50kmの世界記録は3時間32分33秒(2014年)らしいのですが、2倍の速度で歩けるので7時間以内で完走できる選手であれば世界新記録が狙えるようになります。こうなるとダッシュシューズが主流になるでしょうね。
競歩の競技人口は多く見積もっても国内で2,000人程度だそうです。その中で世界選手権やオリンピックを目指す競技者は50人程度ではないかを想定されます。
練習含め1年間で200km歩くすると、国内では「50人×50万円×4足=1億円」の市場規模が期待できます。
しかし歩きがそこまで早いと、マラソン選手も敢えて歩くことで世界新記録を狙うことも考えられます。マラソンの競技人口は1,000万人とも言われており、ダッシュシューズの需要も一気に広がりそうです。
仮にマラソン人口のうち1%が世界を目指すとすると、国内では「10万人×50万円×4足=2,000億円」の市場規模が期待できます。十分事業が成り立ちますね。
ただしスポーツの世界ではスポンサー契約というものがありますので、全員が購入してくれるとは限りません。
価格を下げるとどうなるか?
では価格を大衆向けに2万円まで値下げすると、需要はどう変わるでしょうか?
- マラソン・競歩の競技者全体
- 宅配業者
- 長距離通学・通勤者
仮にマラソン競技人口全員が年に1回購入する場合、国内だけで「2,000万人×2万円×1足=4,000億円」規模になります。また、大衆向けになったことでAmazon等の宅配業者や、長距離通学・通勤など長い時間歩く人にも需要が広がりますよね。「宅配業界の従事者数」などを調べたりすると、もっと市場規模が精緻化できそうです。
ダッシュシューズの製作コストは不明ですが、少なくとも市場規模の観点でいえば2万円で販売できた方が大きな需要が見込めそうです。
まとめ
如何でしたでしょうか?
フェルミ推定は前提条件の置き方によって結果が大きく変わってしまいます。そのため、実際は条件に抜け漏れがないか何度も試行を繰り返し精度を上げていきます。
また、フェルミ推定は論理的思考力が鍛えられるとも言われており、コンサルティング会社では採用試験の一環で出題されることもあるようです(ぶらんちはやったことないですが)。
もし「とてつもない数字の調査」を依頼される事があったら(笑)、ぜひフェルミ推定を活用してみてください!